玉虫日記 思い出話ひとつ
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2008.01.22 (Tue)

思い出話ひとつ


子供の頃、母の実家である山里の古い家の台所にはおくどさんと呼ばれる大きな竈がありました。
毎朝祖母が火を入れて羽釜で湯を沸かし、そこでご飯を炊きます。
台所は天井がなく煤けて真っ黒になった太い梁がそのまま剥き出しになっていて、暗い屋根裏に小さなガラス張りの天窓が一つ・・・
其処から見える長方形に切り取られた青空に時折小さな雀の足が見えることがあって、ちょんちょんと歩くさまが可愛らしくて首が痛くなるほど見上げ飽かず眺めました。

台所の真ん中にでんと座った大きな竈では太い薪がパチパチと爆ぜて燃え、真っ白な湯気が広い台所中にもうもうと立ち籠もって居りました。
やがて薪は燃え尽きて炭になります。
祖母はそれらを十能で黒い素焼きの壷に移して保存し、
消し炭と呼んで火鉢に入れたり小さなコンロで魚を焼くときなど再び取り出して使っていたのです。
火傷をするといけないから触ってはいけないよと何度も釘を刺されながらも
内緒でそっと壷の蓋を開け眺めることが祖母の家での私の楽しみの一つでした。

壷の中の炭は瞬く星のように煌いて
それはそれは美しく不思議な別世界です。
小さな夜空のような壷の中を暗い台所の片隅で見る楽しみは
その頃のわたしにとってわくわくするような喜びだったのです。

しばらくすると真っ赤な炭はやがて灰となり白く朽ちてゆきます。
それでも時折火の粉が忘れたように散って小さな光を放ちます。
その明滅も間遠になりお終いにはしーんと鎮まり、
炭は仄かな暖かさを残して壷の中に埋もれてゆくのです。

降り積もった雪のように美しい灰。
綿毛のように儚げで柔らかに光る灰。
ある時、どうしても触れてみたい誘惑に負けて小さな一片を指でちょんと摘んでしまいました。
灰は瞬く間に散り、中では未だ赤い火が踊っていました。
熱さに驚いて大声を出しそうになりながらも泣いたら叱られると
痛む指を抱えて半べそで裏庭に飛び出したおかっぱ頭の私・・・

何十年も経て不意に甦った幼い日の思い出は
壷の中の消し炭のように
ちろちろと小さな熾火となって胸の奥深く眠っていたのでしょうか・・

仄かな暖かさが心地よい冬の夜です。
思い出はゆりかご
ゆらりゆらりと私を眠りに誘います・・
20:04  |  思い出話ひとつ  |  トラックバック(0)  |  コメント(14)

Comment

No title

素敵な思い出ですね
我が家にも有りましたよ。子供の頃は何時も釜土でご飯を炊いてました。お湯も一緒に沸かしていましたよ
懐かしい思い出ですね
やけど、大変でしたね・・・ 熱くないように見えるのですが
子供の頃の好奇心は旺盛ですから^^
今思い出すと、贅沢な時間ですね。心に残る暖かい思い出大切に
しまってね
chiyoko-mimi |  2008.01.22(火) 20:13 | URL |  【編集】

No title

何年も思い出すこともなかった出来事が
不意に甦ってくるって不思議ですねえ・・
少しずつ書いて残しておこうと書き留めました。
お読みくださってありがとう^^
tama_ma_ma |  2008.01.22(火) 21:15 | URL |  【編集】

No title

やさしい思い出・・・
思い出はゆりかご。いい言葉ですね。
ihatov12 |  2008.01.22(火) 21:25 | URL |  【編集】

No title

楽しかったときの事を数えながら
眠るとき思い出はゆりかごのようです・・
目を閉ざせばいつだって誰にだって会うことも出来ますよ・・
tama_ma_ma |  2008.01.22(火) 21:31 | URL |  【編集】

No title

静かな冬の思い出ですね~
BGMを入れたくなります (^▽^)V

おばあちゃんちは お隣でしたが~
いろりの灰を 均している姿が 心に残っています
優しく 物静かな 祖母でした。

子供の頃の記憶は
切り取られた写真のように
断片的に現れてきます
動画ではないみたい (笑)
non |  2008.01.22(火) 22:29 | URL |  【編集】

No title

記憶って神秘ですね!だって凄い昔のことも思い出すことがあるなんて凄いもん^^僕も凄く幼い時のこと思い出しました・・・秘密(笑)
おばあちゃんとの思い出って僕にとっても宝物です。
今日の日のこともジジィになった時に素敵な思い出として蘇ってほしいな^^

PS・・・漢字が難しくて読むのが大変でした(苦笑)僕にはふり仮名が必要かもです(爆)

おやすみなさい☆
lim884 |  2008.01.23(水) 02:34 | URL |  【編集】

No title

nonさんなにか素敵な曲つけていただけますか~*^-^*
母は7人兄妹でしたが中でも下のほうでしたので
祖母はほんとうにおばあちゃんという感じの小さな人でした。
古くて暗い台所でくるくると動き回っていました。
動画じゃなくて静止画像・・おっしゃるとおりですねえ・・
tama_ma_ma |  2008.01.23(水) 06:44 | URL |  【編集】

No title

LIMくんおくどさんっていうのは関西だけの言葉なのかな?
京都の古いお家の台所にもきっとあると思います。
漢字でかくと「お竃さん」となるらしい。
どうしてかまどがくどになっちゃったのでしょうねえ・・面白いです。
秘密の内緒話また教えてくださいね・・
tama_ma_ma |  2008.01.23(水) 06:46 | URL |  【編集】

No title

たまちゃん。。お久しぶりです。
素敵な想いでね。
拝見しながら想像したよ。
雀の足。可愛いだろうなぁ~~。。
屋根裏に小さなガラス張りの天井なんて。。なんて。。素敵。

おくどさんは。。テレビとかで私も知っているよ。
たまちゃんって。。小さい時。。結構好奇心が旺盛だったんだ。
私もそうだったのよ~~。。今もだけど。

少し具合が悪いのに。。
いろいろ。。地域のことがあって。。

たいへんだぁ~~の日々だったよ。
やっと。。元気になったけど。。まだ。。地域の問題が残っているの。役やっているから。。気が重いのよ。
でもでも。。食欲はあるんだっちゃ!
yako36 |  2008.01.23(水) 12:42 | URL |  【編集】

No title

竃(へっつい)、私が育った時分にもありました。
建物の半分が土間になっていて、その隅に竃があって、土間で餅つき等した記憶があります。
冬の寒い時はその竃で豆炭をおこして、家族分のアンカを作ってくれました。
こちらに伺って玉虫さんのブログを読んでて、その当時にタイムスリップしました。
竃の匂いまで覚えている自分にも驚きです。^^
choco_choco_hi |  2008.01.23(水) 14:45 | URL |  【編集】

No title

やこちゃーーーん(T_T)
ずっと心配してたんだからぁ(T_T)
どうされたのかなぁ~~って毎日覗きに行っても
お留守みたいで(T_T)
で、お体の具合はもういいんですか?
体調の悪いときに面倒なトラブルはお手上げですよね(T_T)
それに今日の雪(こちらは雨でしたが)
(^-^*)(..*)ウンウン
食欲があるならいっぱい美味しいものを食べて
元気つけてね!

あ、雀のあんよはねえ、小さくて可愛いよ~~
もう一度みたいけどもうあの家はないの・・・
tama_ma_ma |  2008.01.23(水) 19:23 | URL |  【編集】

No title

ちょこママさん!しましたしました。お餅搗き
夜も明けきらぬうちから、多分三時ころかなぁ?
ぺったんぺったんとつき始めてお鏡さんやのし餅を作って・・
最後の一臼のつきたてのお餅がその日の朝ごはんでした。
柔らかくて美味しかった~~
真っ赤な豆炭のアンカありました~~懐かしい。
竈の匂いまで??
私もお餅つきの匂いを今思い出しています*^-^*
tama_ma_ma |  2008.01.23(水) 19:28 | URL |  【編集】

No title

tama_ma_maさんの言葉、どれをとっても胸にしみ透って、遠い子供の頃を思いだします。
へっつい・・・、我が家にもありました。
隙間風が吹いても、心はいつもぽかぽか。
温かい煙、ご飯の炊ける匂い、さつまいもを蒸かす香り・・・
tama_ma_maさんの一つ一つの描写が素晴らしくて、目の前に情景が甦ってきました。
mintogreen |  2008.01.23(水) 22:56 | URL |  【編集】

No title

mintogreenさん、一つ思い出すと次から次へと手繰り寄せられる記憶が嬉しくて忘れないうちにと書き留めました。
今が悲しいとか不幸だとか決して思っているわけではないけれど
なんの屈託もなかったあの頃が無性に懐かしくなるこの頃です。

ボサボサの猫さんのお話
先ほど読ませていただいたところです。
飼い猫の無邪気さは無条件で可愛いのに
どこか醒めた野良たちの目を見ていると
少し切なくなってきます。
不意に消えてしまったり居ついたり・・
猫には猫の思うところがあるのかもしれないですね。
tama_ma_ma |  2008.01.23(水) 23:22 | URL |  【編集】

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